山口46  宇佐郷と向峠の河川争奪
県位置コード 名  称 コード
山口46 うさごう むかたお Flu-pira-1-1-YAGC
宇佐郷と向峠の河川争奪
地形種 地形項目 重要度 規模 保存度
河川地形 河川争奪地形・風隙 *C
所 在 地 図 幅 名
山口県 玖珂郡錦町宇佐郷 2.5万 宇佐郷(広島)
    解  説
 
 広島・島根県境に近い錦町宇佐郷には西中国山地を代表する河川争奪地形がある。瀬戸内海に流出する錦川の支流宇佐川が,日本海に流出する高津川の上流域を奪っている。
 かつて,高津川は広島県境の冠山付近に水源を発した後,南西に流下しながら,宇佐−向峠から県境を越えて島根県吉賀町新田,田野原などに谷底平野を形成ししながら,日本海へと注いでいた。一方,北から流下してきた,かつての支流深谷川も県境の向峠(山口県)−初見(島根県)付近で高津川と合流し,幅広い谷底平野を形成していた。その後,下刻作用を増した錦川支流宇佐川の谷頭侵食の進展によって,向峠東方で高津川の上流部が奪われ,錦川(支流宇佐川)の流域に組み入れられてしまった。続いて,そこから約2km下流の宇佐郷上から北西に延びる一支流の谷頭侵食によって,深谷川も錦川(宇佐川)へ組み込まれることとなった。
 河川争奪の生じた時代は十分には解明されていないが,更新世後期と推定されている。争奪面積約100km²で,中国地方有数の規模である。かつての高津川の河床は,下刻の進んだ現在の深谷川や宇佐川にとっては段丘地形となっている。宇佐川河床と段丘面の比高は100〜150mにも達する。所々に厚さ数mを超える円礫層が観察できる。また,向峠東方より上流の浦石や中国自動車道の宇佐川橋付近には、標高400〜440mの平坦な段丘地形があり,かつての高津川の流路の痕跡をとどめている。上流部を争奪された現在の高津川は,島根県六日市町星坂の北西の「一本杉の池」湧水が源流となっている。
 深谷川の峡谷は西中国山地国定公園に含まれる。段丘面上には集落が立地し,平坦さを利用して水田となっているところも多い。中国自動車道が,段丘面伝いに建設されており,部分的に車窓からの観察もできる。
 


1 宇佐川(左側の谷)によって上流を奪われた高津川の谷底平野


2 旧高津川上流の谷(前方の林付近で争奪を受けている)


3 高津川を争奪した宇佐川の谷


4 段丘化した旧高津川谷底(前方の白くみえる平坦部)